拡大自殺を考える


2019年5月28日に川崎市登戸で起きた悲惨な事件。無残にも未来ある子どもたちとその父母を殺傷し、加害者も自ら命を絶つという悲惨な事件です。
亡くなられた方のご冥福を心からお祈りすると同時に心身に傷を負われた皆様の回復をお祈り申し上げます。

過去には、2001年6月8日、大坂教育大学附属池田小学校での殺傷事件、2008年6月8日、秋葉原通り魔殺人事件があり、これらを思い起こさせる事件でした。

その他にも、不特定な人を狙った殺人事件と同時自殺は起きています。
「誰でもよかった」「人を殺せば死ねると思った」という大変身勝手な動機。
決して許されるものではありません。

このような自殺を「拡大自殺」といいます。無差別に他者を巻き込む自殺です。

このような事件を未然に防ぐには、そして、「根本的な解決」には何が必要なのでしょうか?

みなさんといっしょに考えていきましょう。

これは社会問題です。
私たちはこの社会問題をどう捉えて、今一人ひとりにできることは何なのでしょうか?

このようなケースに共通するものは、・・・

1.孤独で孤立していることです。たとえ同居の家族がいても「こころ、気持ち」が孤独を感じている、他者からも社会からも「孤立」していることです。自ら生きにくさを感じて、手を差し伸べてもこころを閉ざし自分から孤立することもあります。

2.疎外感、劣等感が強く、自分自身のことを自分が否定しています。「こんな自分はもうダメだ」と捨て身であること。

3.社会に対する不満が強く、攻撃性があります。それは自分に対する不満でもあり、その矛先は自分以外の他者や社会全体に向けられます。人のせいにする、他罰性が強いのです。冷静な状態では死んでしまいたいと考えてもとても自殺ができない。怖さも抱えています。

これらは、本人も「自分で自分のことがよくわからない」ところから始まります。もともとの個性、気質、パーソナリティの占める割合は大きいと思います。

その個性、パーソナリティを助長させるのも抑制するのも、それは彼らを取り巻く環境にあります。社会全体も含めて。

理屈なしに「反応」として表出する部分は、本人でさえもわからないのです。脳の反応だからです。

まわりの人たちは、もっとわからないのです。もっと理解できない。不可解な存在だと思ってしまいます。

そのあたりから、人が自分を避けているように感じるのでしょう。すると自分も人を避ける。または威嚇する。相手を脅威と感じると、防衛本能が働き、逃げるか、相手を敵対視して攻撃することがあります。

そんな不器用な人間関係の中で、寂しさを感じながらも、人とかかわると自分が傷つくことを恐れ、人を避けどんどん孤立していくのでしょう。

人間は、誰でもひとりは寂しい

子どもの頃のできるだけ早い段階で、この個性に気づいてあげることは大変だいじなことです。

誰も、赤ちゃんのときから人を殺してやるとか自分が死にたいとは思いません。生きよう生きようとしています。

1歳でも思いません。2歳でも思いません。3歳でも思いません。4歳、5歳、6歳、7歳・・・と考えていくと、いったいどこで、いつから「生きにくさ」を感じるのでしょう?小学校の高学年~中学生の頃でしょうか。

家族、親子だけでは、子どもがどんなパーソナリティをもっているか、わからないことがあります。人は自分のこと(タイプ)はわかっても自分と異なるタイプはわかりません。脳の感覚的な部分はとくに個人差があり、わかりません。

幼少期にどんなパーソナリティをもっているかが、おおよそ、だいたいでもいいから掴めるといいですね。

それには、早くから専門家が入り、家族を見守ることで、かなり予防ができるようになると思います。一家にひとり専門家の介入が当たり前になる社会でありたいと私は考えます。国で制度をつくっていただければ一番いいのですが・・・

加害者をつくらないことは、イコール被害者を出さないことです。イコール全員をも守ることができます。

仮に、幼い頃から子どもに「行為障害」があったとしても、その子を将来、加害者、犯罪者にしない方法はあります。それは親子だけでは難しいことで、公的な支援、サポートのもとで、将来的にもずっと継続して見守ることが必要だと私は思います。

それがいちばんの予防だと思います。

途中でサポートをやめてしまうと問題です。「もういいかな?」「もうだいじょうぶかな?」ではなくサポートは継続がだいじです。

生きにくさを感じていない人たちからの視点では、「生きにくさ」そのものがわからないのです。理解しがたいのです。しかし、生きにくさを感じている人にとっては本当につらいことで、苦しいことなんだと思います。

共感能力の高い女性脳は比較的「生きにくいんだろうな~」となんとなく理解し得ることはできても、共感性においては脳の構造的な問題(脳梁の大きさ)から共感性に乏しい男性脳は、かなり理解が難しく、生きにくさについて、「そんなことはない」と、生きにくさを否定してしまうことがあります。甘えているとか怠けているとか捉えてしまうことがあります。

そうなると彼らは、甘えや怠けというレッテルを貼られ、ますます生きにくくなっていきます。

人口の半分は男性なので、この男性たちに理解していただくと、生きにくさを感じている人たちを追い込むことなく、受け入れて見守れる社会になると、私は思います。(もちろん女性でも理解できない人もたくさんいます)

拡大自殺は社会問題です。

防ぐには、いまの資本主義社会のあり方、競争社会、経済優先、優劣で決める、勝ち負けをつくる、これらを見直す必要があると私は考えます。

そこから端を発していることを、これをご覧になっているみなさんに伝えたいです。いっしょに考えていただきたいです。

偏差値がいくつであろうと、徒競走が速くても遅くても、身体が大きくても小さくても、みんな大切な人間です。貴重な人です。みんなそれぞれ何かの役割や使命をもって生まれてきています。子ども同士を比べてはいけません。

互いに人権があります。互いに尊重されるものです。

それなのに、今もなお、教育の現場では、勝手に他者が子どもの優劣をつけ、それが基準となって、あたかもそれで人間の価値が決まってしまうかのような残酷な教育がまかり通っています。ここが社会問題なのです。

ここに国が気づかないといけません。しかし、国を運営している人々はいわゆる「勝ち組」で構成され、これを自ら崩そうとはしません。そこで、私たち国民一人ひとりの意識と声が重要になってくるわけです。

誰も加害者にしない、誰も被害者にしない、そんな社会を意識してつくっていきたいです。

 

現在、引きこもりになっている人、その家族は、勇気を出してSOSを発信しましょう。

KHJ全国ひきこもり家族会連合会 03-5944-5250 👈 こちらへ早めのご相談を!

埼玉こころの電話 048-723-1447

埼玉いのちの電話 048-645-4343

日本臨床心理士会電話相談 03-3813-9990

よりそいホットライン 0120-279-338

いじめ・不登校は

埼玉県教育委員会 相談窓口 👈 こちら

子どもが自分でかけられる相談窓口

チャイルドライン 0120-99-7777

24時間子供SOSダイアル 0120-078-310

子どもの人権110番 0120-007-110

※ 注意していただきたいのは、引きこもりの人や孤立している人がすべて犯罪を犯すのではないということです。短絡的にイコールで結びつけないでほしいことです。ステレオタイプの方は気をつけていただきたいとお願い申し上げます。