シック・マザーとは
シック・マザーの「シック」とはなんでしょう?
シックというと「エレガントな」とか「洗練された」というイメージがあるかもしれません。
しかし、ここでいう「sick」とは「病的な」「こころを病んだ」と解釈しています。シック・マザー(sick・mother)とはこころを病んだ母親という意味になります。※参考「病める母親とその子どもたち」著者 岡田尊司 医師
母子の愛着形成
母親(養育者)と子どもとは密着な関係にあります。人間の発達にとても重要な役割を果たすものが「愛着の形成」です。どのような状況でも愛着は存在し形成はされるものの「愛着の質」は異なります。肝心なのはこの「愛着の質」なのです。
誰も悪くありません。
誰かを責めるのではなく、事実を認識して子どもの健全な人格形成のために周囲の支援が必要なのです。
特に生後から2~3歳までの乳幼児期の影響が重要です。
この時期に、母親がうつ病などにより子どもに対して十分な関心(意識を向ける)や世話をしてあげることができない困難な状況(母親の入院や療養)にあるケースでは、母親の不調や不在が子どもの愛着形成に大きな影響を与えてしまうことがあります。
子どもの情緒的、行動的な問題や、認知的、社会的な発達の問題になり、長期的な影響を及ぼすこともあります。
3歳以降の幼児期は、本来であれば外界への好奇心が発達し、何にでも興味や関心が湧き、外界への行動力も急速に伸びてくるのですが、シック・マザーの不調や不在が「母子分離不安」や「愛着不安」を強めてしまい、母親の愛情を求めて甘えがひどくなることや自己顕示欲が強くなり、一見「わがまま」がひどいように見えることもあります。
こんなとき周囲は、ただの「甘ったれ」や「わがまま」ではないことに気づいてあげてください。
児童期(学童期)になると、その影響は幼児期ほど目立たなくなるが、母親の状態を理解し把握することができるようになるため、「母親は病気で、ぼく(わたし)にかまってくれないのだ。ぼく(わたし)が嫌いなわけではない」と考えて捉えるようになります。(個人差はありますが)
しかし、同時に「親の助けになりたい」と子どもなりに気を遣い、先回りしていろいろ助けようとするようになります。病弱な母親に対して保護者のような振る舞いになることも。それは、子どもの人格形成に必ずしも良いわけではなく、自分の欲求を抑圧し、相手の欲求や意向を優先する「他者本意的な行動様式」に発展することも多いので、ここもまた周囲は気をつけてみてあげることが重要な課題となります。
無意識に自分を押し殺し我慢してしまうのです。本来であれば自分の欲求を前面に自己主張することで、「自分はどうしたい」が掴める人になっていくだいじな時期なのです。
思春期、青年期になると、母親に対する依存度は低くなりますが、子どもにとって「親はモデル」です。心理的な面でやはり影響を及ぼします。アイデンティティの確立に影響することがあります。
それは、同性の場合、母親をモデルにする女の子では否定的な自己像(セルフイメージ)を抱きやすくなることがわかっています。
不安定な母親に共感し、何とか支えになろう、助けようとするが、それがうまくいかなかったときには「自分はダメな人間だ、母を救えない」と自己否定するようになってしまうケースもあります。
「自分を直すのは自分」なので、決して子どものせいではないのに、子どもは「自分が無力だから自分が悪い」と誤った認識をもってしまうケースがあるのです。
もちろん、そうした影響が少ない(巻き込まれない)子どももいます。その場合は逆の影響で、冷静に親をみて拒否したり拒絶することもあります。
母親(養育者)との健全な愛着は、生きるうえでの基本的安心感、人との信頼感につながります。
周囲の人は母親には代われないけれど、それでも母親の足りない部分を補ってあげてほしいと思います。他者を頼ってもいいと思います。子育てサポート、支援、公的私的を問わず、どんな支援でも受けてみんなで育てる意識をもっていただきたいと思います。
成人してからの影響は後日記載します。
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