ケーススタディ
正論を振りかざす人がよく使う『〇〇すべきでしょ』
すべき思考(べき論)
べき論とは ある種の「思考のクセ」で「認知の歪み」の一つとされています。〇〇すべきと思ってしまうのはアンコンシャスバイアス、無意識の思い込みなのです。
これは『~~すべき ~~すべきでなかった ~~しなければならない ~~してはならない 』などの強い義務感や強い責任感から起こる思考のパターン(思考のクセ)なのです。
もともとは『よくしたい』という気持ち。 何かをよくしたいという善意から『〇〇するべし』が『〇〇するべき』になったのでした。
具体例をみていきましょう
『返事はすぐに返すべき 約束の時間は守るべき 運動は毎日するべき 食事はきちんと3回とるべき』
良いことを言っているのですが・・・支配的に感じませんか?
べきの前にくる言葉は良いおこないですよね
『返事はすぐ返す 約束の時間は守る 運動は毎日する 食事をきちんと3回摂る』
良いこと言っているのですがどうですか?
「べき」をつけるだけでこんなにきつく感じてしまうんですね
さらに・・・
これのあとに続く言葉が・・・もしこうだったら・・・
『返事はすぐに返すべき 読んだのに返さないのは怠慢だ!』
『約束の時間は守るべき 守らないなんて信じられない!おかしい 変だ!』
『運動は毎日するべき 毎日しないのは自分に甘いからだ!』
『食事はきちんと3回食べるべき 食べないのはおかしい 変だ!』
こんなふうに文脈がつながるとどうでしょう? かなりきついですね
言われた方は、もう責められているという気持ちになりませんか?
責めているほうは気づいていない 自分をも苦しめていることに!
つらいのは言われた相手だけではなく、実は言っている本人もつらいのですが、本人は気づいていないことが多いんです。そこが問題なんですね。
え、それってどういうこと?
自分に向ける「すべき思考」 完璧であらねばならぬと厳しく自分を追い込んでいます。
相手に向ける「すべき思考」同じように完璧を相手に求め厳しく追い込みます。
自分にも相手にもプレッシャーを与えていること、それは緊張を引き起こします。
緊張は自律神経系の交感神経にスイッチが入り起こります。内分泌系にも影響し、いわゆるストレスホルモンと言われるノルアドレナリンやコルチゾールが体内に増えてしまうんですね。緊張状態が続くとストレスから病気になってしまうこともあります。
原因 どうしてそのような思考のクセがついてしまったのか?
私たちは知らない間に無意識の中に「こうすべき」をいくつも作ってしまっています。それも生きる手段の一つなんですが、行き過ぎてしまうと相手も自分も苦しめることになってしまうんですね。
思考のクセは生まれつきではありませんから、育っていく途中でついてしまうんです。
研究でわかっていることは、子どもを取り巻く養育者(親など)に「すべき思考」があると子どもに連鎖してしまい、知らず知らずに自分自身の思考のクセになってしまう傾向があります。世代間連鎖です。
それは親(養育者)から『~~すべきでしょ』と言われたときに、子どもは未熟ですから『そうか、~~しなければいけないんだ』と受け取ってしまうからなんです。ここがポイントです!
それで、自分が『そうしなければいけない』と強くインプットしたことは常識となり、他者がそうしていない状況をみると、自分が守っているのになぜ守らないんだ!となり『~~すべきでしょ!!』という言葉になって相手に言ってしまうのです。
決して親が悪いわけではありませんよ。みんな知らないだけなんです。でも知らないと連鎖してしまうんです。ですから、どこかでこの連鎖にストップをかけることがだいじなんです。
すべき思考が強い人の特徴
完璧主義の傾向が強いこと ものごとを完璧にこなさなければならないと過剰に高い目標を自分に設定してしまう傾向があります。自分や相手を追い込んでしまう傾向です。
たとえば 「100点取って当たり前」「早くできて当たり前」おとなになってからも「できて当たり前」さらに「できないのはおかしい、変だ、ダメな人だ」と失敗を許せなくなる思考になります。自分にも相手にもです。
また他者に迷惑をかけることも「迷惑をかけるべきではない!」と自分が思っているので、他者にも迷惑をかけることを非難して許さないのです。自分の中の「当たり前」を強要していることになります。
他者にも自分にも融通の利かない不寛容な人になってしまうんですね。
すべき思考を切り替えるには
まず、考え方として相談室では認知行動療法を用いるのですが、自分でできることは自分を分析してみること、自己理解です。
「こうすべき こうしなきゃダメだ」という思いの裏側には何がありますか?
『こうしなかったら大変なことになる』という怯えや不安ですね 過去に酷く叱られたのかもしれません。
そのときのつらかった自分、苦しかった自分が癒されていないのかもしれませんね。そのときのストレスを抱えたまま自分がされたことをほかの誰かにしたいのかもしれません。これは負の連鎖なんですね。
切り替えるには 出来事、思考、感情を書き出してみましょう。
思考のクセをほかの考え方に置き換えてその思考を試してみましょう。
伝え方を変えてみましょう!
返事はすぐに返すべき➡自分に「返せるようなら返したいね」
➡相手に「できるだけすぐに返してもらえたら助かるな」
約束の時間は守るべき➡自分に「時間を守るようにしよう」
➡相手に「守ってもらえたらうれしいな」
運動は毎日するべき➡自分に「毎日できるようにしたいな」
➡相手に「私は毎日した方がいいと思っているんだ」
食事はきちんと3回とるべき➡自分に「3回とるようにしたいな」
➡相手に「私は3回とるようにした方がいいと思うんだ」
そうなんです。
もうおわかりですか?
すべき すべきでない のうしろには「そうしなければいけない」が潜んでいるのです。自分を縛る言葉です。
苦しいですよね。
すべき思考が身についてしまっている人へ
自分にずっと長い間厳しくプレッシャーを与え続けてきた自分を解放しましょう。
自分に対してやさしくなりましょう。自分を責めるのではなく、自分の努力を認めましょう。自分にも相手にも寛容でありたいですね~
もしあなたが『~~すべきでしょ』と言われたら
『あなたはそう思うんですね』と受け止めた後に『わたしはちがう視点でみてみました。わたしはこうありたいと思います』と言ってみてくださいね。自分の気持ちを大切にして自分の考えを伝えましょう。
ここで『すべきかどうかなんてわからないでしょ!』と言ってしまうと争いになりかけませんから要注意です。
ポイントは
〇〇するべき ➡ 〇〇でありたい に切り替えましょう!
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