無差別殺人、通り魔事件。何か防げる方法はないのでしょうか? 多くの人は、一度はそう考えるでしょう。
8月6日に起きた小田急線無差別殺傷事件
身勝手な理由から人の大切な命を奪おうとする。被害に遭った人からみれば思いもよらぬ突然の犯行に声も出せなかったでしょう。
感情爆発はなぜ起こるのでしょう?
いきなり起こるわけではありません。不満やストレスが溜まって溜まって、ある事をキッカケに爆発します。1968年の三億円事件など緻密な計画犯罪とは異なります。それは、感情・情動(エモーション)を司る脳のしくみにあるそうです。
巨大な不満が引き起こす衝動的行動は反社会的行動です。
不満やストレスは誰にでもあるものですが、それがなぜ、そこまで大きくなってしまうのでしょう?
多くの人は「共感」をもつことで、衝動的な行動にブレーキがかかります。
「他人に危害を加えないようにする」「他人を殺してはいけない」という道徳心。「自分がされて嫌なことは他人にもしない」という道徳心。これらは、共感能力が脳で働くことで、理解できて、それを守ることができるのです。
共感力の高い人ほど「刺されたら痛いだろう、苦しいだろう」と自分のことのように感じられるからです。反応に感覚が敏感であるとも言えます。
腹が立っても、怒りがこみあげてきても、この「制御装置」が正しく機能していれば感情爆発は起こさないのでしょう。
なぜ、脳の制御装置が働かないのでしょう?
要因はひとつではなく、いろいろあるのですが、犯罪心理学の学者らの研究によると、心臓の鼓動(心拍数)と反社会性には相関関係があることが複数の実験結果からわかったそうです。心拍数がもともと低く上がりにくい体質の方が反社会行動を起こしやすいという結果があるそうです。エイドリアン・レインの1997年の調査によると、3歳のときに心拍数が低い子どもがのちに暴力や非行をする割合は、そうでない子どもの2倍という結果があるそうです。心拍数は自律神経系と連動しているので、それはまた偏桃体とも関連しているそうです。また脳梁の形状にも一般人との差があるそうです。
生まれつきの体質にも要因はあるようです。誰のせいでもありませんよね。
脳科学者の中野信子氏によると、①脳の機能について、遺伝の影響は大きい。②生育環境が引き金となって、反社会性が高まる可能性がある。ということだそうです。(※可能性が高いことと「絶対にそうなる」はイコールではありませんので注意)
このような脳のなんらかの異常は1%~3%くらいあるそうです。100人に1人~3人です。男女比率は男性に多いそうです。
しかし、事件を起こすまでは、その人たちとも共存していかなればなりません。見分けがつかないし、その人にも事件を起こすまでも起こしてからも人権があるからです。排除するわけにはいきません。
だからこそ難しい問題なのですが、予防には、可能性をつくらないことと、可能性を早く見つけ、早くサポートしていくことだと私は思います。
恐ろしく悲惨な事件、過去にもたくさんありましたね。
報道ではその時(事件・出来事)としか取り上げていなくて、その後の検証の部分が報道されていないのです。
もっと広く国民全体で考える必要がある問題です!
決して他人事にしてはいけない、いつ加害者になるか被害者になるか、またその家族になってしまうかわかりません。
大切な命が無残にも一瞬にして奪われるかもしれません。被害者家族も、加害者家族も、事件後は壮絶な苦しみが待っています。未然に防ぎたい。
多くの人が『あんなのめったにない。遭遇した人は憐れだが気をつけようがないから仕方ない』くらいに思っているのではないでしょうか?それはいけません。
想像してみてください。もし家族だったら、身内だったら、大切な人だったら。
共感能力と想像力を働かせてください。どちらも悲しく辛く苦しいですよね。
被害者の家族になったら本当に無念で悔しくて犯人を殺したいくらいだと思います。ただ誰かを恨んでも憎んでも解決しないことも事実です。
伝えたいのは誰のせいでもない
誰も赤ちゃんのときからそうだったわけじゃない。
幼児のときからそうだったわけじゃない。
小学生のときからそうだったわけじゃない。
中学生?高校生?
事件を起こすずっと前にその種、その芽はあるかもしれません。守りましょう。
どこかで小さな小さな変化に気づいてあげたら、誰も加害者にも被害者にもさせないで済むのではないか、と思ってしまいます。ゼロにはならなくても少しでも減らすことはできるのではないでしょうか。
ただ、近くにいる人(家族も含めて)が少しの変化に気づいても「どうしていいかわかならい」「誰に相談したらいいかわからない」あるいは「相談したが大丈夫、そのうち変わると言われた」「様子をみるように言われた」そのあと「どうしていいかわからない」というケースもあります。
また民間ではどうにも支援できない場合も多くあります。支援には時間もお金もかかるからです。
だから国があるのです。政府があるのです。やはり行政の力(税金)で対策を考えていただくことが必要だと思います。政府もそこに予算をとり、どんな小さな変化も見落とさないシステム(みんなで子どもを大人にするシステム)それと、サポートし続けるシステムを構築していただきたいと思います。
記憶にある事件 (この中で加害者が女性は1人だけです)
1980年8月 新宿西口バス放火事件 6人死亡 14人負傷
1981年6月 深川通り魔殺人事件 4人死亡 2人負傷
1982年2月 大阪西成区覚せい剤中毒者7人殺傷事件 4人死亡 3人負傷
1985年9月 下関日本刀10人殺傷通り魔事件 4人死亡 6人負傷
1996年7月 北九州市小倉通り魔事件 15人負傷
1998年1月 堺市通り魔事件 1人死亡 2人負傷
1999年9月 池袋通り魔殺人事件 2人死亡 6人負傷
1999年9月 下関通り魔殺人事件 5人死亡 10人負傷
2001年4月 レッサーパンダ帽男殺人事件 1人死亡
2001年6月 大阪教育大学附属池田小学校事件 8人(児童)死亡 15人負傷(児童含む)
2003年3月 名古屋市連続通り魔殺傷事件 1人死亡 1人負傷
2007年1月 京都精華大学生通り魔殺人事件 1人死亡(未解決)
2008年3月 土浦連続殺傷事件 2人死亡 7人負傷
2008年6月 秋葉原通り魔事件(無差別殺傷事件) 7人死亡 10人負傷
2008年7月 八王子通り魔事件 1人死亡 1人負傷
2010年6月 マツダ本社工場連続殺傷事件 1人死亡 11人負傷
2010年12月 取手駅通り魔事件 14人負傷
2011年11月 茨城一家殺傷事件 2人死亡 2人負傷
2012年6月 大阪心斎橋通り魔殺人事件 2人死亡
2012年10月 博多駅通り魔事件 3人負傷
2013年3月 広島江田島中国人研修生8人殺傷事件 2人死亡 6人負傷
2013年3月 東陽町駅前通り魔事件 4人負傷
2013年5月 大阪生野区通り魔事件 2人負傷
2014年3月 柏市連続通り魔殺傷事件 1人死亡 1人負傷
2015年7月 大阪八尾市女子高生通り魔殺人未遂事件 1人負傷
2015年9月 熊谷連続殺人事件 6人死亡
2016年6月 釧路イオンモール通り魔殺傷事件 1人死亡 3人負傷
2016年7月 相模原障害者施設殺傷事件(津久井やまゆり園)19人死亡 26人負傷
2018年5月 名古屋マンガ喫茶殺人事件 1人死亡
2018年6月 東海道新幹線車内殺傷事件 1人死亡 2人負傷
2019年1月 原宿竹下通り暴走事件 8人負傷
2019年5月 川崎市登戸通り魔殺人事件 2人死亡 8人負傷
2020年5月 福島三春町ひき逃げ殺人事件 2人死亡
2020年7月 愛知豊橋車突っ込み殺傷事件 1人死亡 2人負傷
2020年8月 福岡商業施設女性刺殺事件 1人死亡
2021年8月 小田急線刺傷事件 10人負傷
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