おとなになってからの影響 シック・マザーってなあに? 後編 おとなになった子ども


シック・マザーってなあに? 後編です。おとなになった子ども


シック・マザーとはこころを病んでいる母親。子どもに対してその母親の与える影響についていっしょに見ていきましょう。岡田尊司先生の著書「病める母親とその子どもたち」~シック・マザーを乗り越える~を参考にしてわかりやすくお伝えしています。

前回は乳幼児期から思春期までの子どもに与える影響をお伝えしました。前半はこちら
今回はシック・マザーの及ぼす影響がおとなになったとき、どのように影響するのか?またその対処方法はどうしたらいいのか?をお伝えさせていただきます。

💗はじめにだいじなこと

誰も悪くないのです。決して病気だから悪いとかそういうことではありません。困ったこと、問題や課題を誰かのせいにするものではありません。事実を認知して把握して、よりより対策を周囲のみんなで共有し、その母親と子どもたちを守っていくためのものです。

母親の心境

母親自身『私は悪い親だ』『私には子どもを育てる資格がない』『わたしなんて子どもを産まなきゃよかった』などと、自分で自分を責めているケースも多いのです。自分の人生そのものにも、子育てにもすっかり自信を失っているケースもあります。

しかし、人間は自分を責め続けることはできません。自分を守りたい気持ちが本能にあります。そうしたときに、子どもに対してネガティブで否定的な態度『なんで生まれてきたのよ!』という言葉を発してしまうことがあります。結果的に悪影響を及ぼしてしまうことになるのです。

決してその母親のせいではなく、脳の病気や障害が原因であり、その点をまわりも冷静に適切に対処していくことが子どもへの影響を最小限にとどめるのではないかと思います。

 

影響がおとなになってから顕在するケース

子どもの気質にも関係します。親がシック・マザーだったとしても比較的影響の少ない場合もありますが、問題は強く影響を受けてしまったケースです。それは生まれ持つ子どもの気質(不安遺伝子)に関係があるからです。

おとなになっても、親との間に未解決な問題を抱えることは、自分と夫、自分と子ども、それぞれの愛着に影響し、それを不安定にしやすいことが研究でわかっています。

よくあるご相談でも「夫との関係がうまくいかない」「子どもとの関係がうまくいかない」などのお悩みで、深く幼少期まで掘り下げていくと、実は「子どもの頃から今も母親との関係がうまくいっていない」というケースが見られます。

この未解決な問題をどのように克服していくかが、負の連鎖を断ち切るために重要な課題となります。

影響の捉え方でおとなになったときのライフスタイルまで変わってしまいます。

回避型とは

脱愛着の傾向を示します。過去の傷つきに蓋をして安定を図ります。そうして自分を守ることを覚えたのでしょう。人に頼らない。自分の力だけでなんとかしようとする。いわゆる独立独歩型です。

ローンウルフのライフスタイルをもちやすいのです。

人との関係で親密な関係を避けようとします。なかなか人を信頼しません。信頼したいのに信頼できないのです。それも親(シック・マザー)との信頼が築けなかったことに由来するのでしょう。

このようなケースでは「愛のある人とのかかわり」の代償として、権力や仕事の業績や金の力といった「人間の気持ち」以外のところ(権威・権力・金・物)を信じて価値を置き、自分の存在価値もそこでの成果に基準を置くようになる傾向が見られます。本当は寂しいのかもしれませんね。寂しさに気づいてしまうと苦しくなるので、あえて避けているように思います。

 

とらわれ型とは

親との傷ついた関係に今も生々しくこころが囚われていて、親を求める気持ちと憎んだり拒否する気持ちが混在したまま葛藤している状態にあるケースです。

親以外の対人関係においても、アンビバレント(相対性的な)感情が押し寄せてきて、相手に好きなのに嫌いと言ったり、過剰な執着をみせたり、あるいは、極端な被害妄想や自分を否定されたと思い込み相手を恨んだりして、相手から見たら「どう接していいのか」掴みどころのない不安定さを感じて、やがて離れていくことも。

こうした対人関係では、表面的にはつき合えても親友ができない、恋人ができない、続かない、などの課題となって表れます。

 

子どもの頃の愛着の課題は、その後の成長の発達に影響を及ぼしますが、人間の成長はそれだけではないので、おとなになって一見まったく目立たないというケースもあります。しかし、何か(受験・就職・恋愛・結婚・出産・子育て)のキッカケで、動揺が与えられて初めて根っこにある問題(未解決)が露呈されることがあります。

おとなになったらいつからでもいい。気づいたときが向き合うときです。

サポートには専門家に介入してもらい早期の解決へもっていきましょう!

 

※関連

育児支援

愛着障害