親の学び ママ・パパのための子育てに役立つ発達心理学


親の学校 親になる、親をする

親ってなんでしょう?

たとえば望んでいなくても妊娠して出産してしまえば「親」になってしまいます。親になろうと思っていなくても親になってしまうケースがあります。親になって親をするって貴重な体験で最大に重要なプロジェクトなのですが、今まで国はよくわかっていなかったのかもしれませんね。親から代々教わるだろう、親のやってきたものを見て覚えるだろうとか。

いやいや育児ってそんなに軽いものではありません!子どもの健全な発達に欠かせない「対応の仕方」があるのです。大人になるまで獲得するアイデンティティを獲得できないケースも近年増えているようです。

学校だって入るために勉強します。受験があります。就職するにも試験があります。しかし、親になる学校はありません。これって社会課題です。誰もが受けられる親の学校。妊娠可能になったら性教育と共に無料で受講を必須にするといいのではないかと私は思います。発達心理学は自分を振り返るにも参考になるので中三か高校の授業の中で必須にしていただきたいと願います。

子どもは社会の子

子どもは社会の子という考え方。自分だけの子どもではない。やがて社会に還元するもの。

子育ては「人をつくる」「人間にする」ことによって社会へ送り出す大変重要なプロジェクトです。それは、生まれてきたわけを子どもに教えてあげるところからスタートします。知っている親は少ないのかもしれません。親も教わっていないからです。

生まれて来たわけは、いま、命あるものが社会を創っています。命のある限り、その間社会を構成する一員として自分に与えられた何らかの役割・使命をもって社会を創っていき、やがて次の世代へつないできます。そのために生まれてきています。自分の役割使命を見つけられる人間に育てること(自己肯定感、自己効力感、自律性、自主性、勤勉性、対人能力、本物の知力、工夫力、あきらめない気持ち、勇気、自信、自制心、など養う)が育児の目的です。ですから育児は最重要なプロジェクトなのです。

親になる人権は誰にでもありますし守られます。日本では旧優性保護法という人権を無視した法律が1948年~1996年まで施行されていました。これは酷い法律でした。誰にでも親になる権利はあるのに奪っていたのです。

同時に生まれてくる子どもは親を選べません。子どもの権利を考えると親による育児放棄、虐待をする、子どもの養育に望ましくない態度や環境は、子どもの人権侵害でありこれは社会課題です。

親にも子にも人権があり、それを守るには教育をすることでしょう。しかし勉強に自主的にならない(あるいはなれない)人もいて、その人にも人権があり、子どもを産む権利はあります。人権は守られるものです。子育てに必要な考え方とスキルは知って学んで習得してもらうことが「国の責務」だと私は考えます。少子化対策というなら国で無料受講できるシステムをつくることが必要です。

昨今の痛ましい事件、育児放棄、子どもへの虐待、暴言、不適切な養育態度、たとえ虐待までもいかないとしても人格形成には影響します。するとその子どもの将来に渡る人生まで影響します。これを防止する。

成長の途中で子どもが獲得していくもの(末尾の表参照)を獲得できるように接していくことが親の役割です。親になる前の人の教育が必須です。もちろん、親になってからも学んで本当の意味の「親をする!」を実践することがだいじですね。児童虐待防止協会

人間の成り立ちには子どもが安心できる人による安心できる環境が必要です。

 

それでは子どもの発達段階に合わせて見ていきましょう!

乳児期 0~2歳頃

この時期、獲得するものは愛着と信頼です。赤ちゃんはママ・パパ養育者に命を預けているわけですから絶対の信頼で向き合っています。生物として生きていくための本能です。ここでだいじなことは赤ちゃんが発するサインに的確に対応すること!まだ言葉で気持ちを伝えることができない赤ちゃんは必死にママパパを見ています。目でサインを送り泣き声で要求を分けて伝えています。お腹空いたよ~オムツ気持ち悪いよ~近くに来て抱っこしてよ~甘えたいよ~、いろいろなサインを出しています。このサインにいち早く気づき、的確に応えてあげるとそこで自分以外の他者への信頼が生まれます。まず、目を合わせてください。スマホに夢中になって赤ちゃんの顔を見ない、目を合わせないで返事だけしてもダメなんです。伝わりません。いいえ、気持ちがここ(子ども)にないことが赤ちゃんに伝わってしまいます。

愛着は歪んで形成される場合があります。愛着が育たないのではなく歪んでしまうのです。それはママパパの対応が不適切だったケースです。サインにきちんと応えてしっかりと愛着を築き赤ちゃんに人を信じて頼っていいことを態度で教えてあげてくださいね。このときママパパの態度はいつも安定していて一貫性があることがだいじです。

ママパパへの信頼がやがて広がって、まわりの家族や社会への信頼感を養っていきます。信頼が獲得できないと将来人間不信になることもあります。とてもだいじですね。

 

幼児前期 2~4歳頃

この時期獲得するものは自律性です。たとえば「トイレは使ったら水を流すものなんだ」と自分の意志によって自分が獲得した規律で自分の行動を制御することを自律と言います。そのためには「規律」を教えることです。いわゆる「しつけ」ですね。ところが「しつけ」と称して虐待の事例がニュースでも取り上げられていますね。

ちがいはここ『トイレは使ったら水を流さないといけない!流すべき!』じゃなくて、『流すものなんだよ、流すとキレイになって気持ちいいね』と教えます。ここがだいじです。~~しないといけない、~~すべき、これらは脅しです。脅して言うことを聞かせようとしています。恐ろしいですが日本では「しつけ」というとこのような言い方が当たり前のように言い継がれていました。ですから多くの人が臆病傾向になってしまったわけなのです。わかっていただけますか。

規律とは言われて仕方なくやるのではなく、自分の規律のもとに守ることで「自信」が芽生えます。自信からものごとを成し遂げたことで達成感を得ます。こうして自己肯定感が芽生えます。本当に2~4歳頃はだいじです。

またこの頃から共感性、おもいやりを育てることがだいじです。それは『〇〇しなさい!』ではなくて『〇〇しようね~』たとえばお友達におもちゃを貸してあげる、お菓子を分ける、などの場面で『貸しなさい!』じゃなくて『貸してあげようね~きっと喜ぶね』とか『分けなさい!』ではなくて『分けていっしょに食べたらうれしいね、たのしいね』と、ママパパが言ってあげます。親の言葉と態度で共感性やおもいやりは養われます。

一方、この頃(4歳)『お友達はできるのに、ぼく(わたし)はできない・・・』と他人ができていることでも自分ができないことがあるとそれに気づきます。すると、できないことを恥ずかしく感じるようになります。それがやがて、失敗したり叱られたときに感じる道徳的な「恥」に発展していくのです。恥の概念です。

大人になって自分が「恥」を気にする傾向があるとしたら、もしかしたらて子どもの頃に親から『〇〇ちゃんはできているのに、なんであなたはできないの!』と比べられて叱られたケースかもしれませんね。親は気をつけましょう。

恥を感じると自信をなくしますし、それは自分の力を疑うこと、自己否定につながることもあります。

こんなとき親は『あ、できないって思っちゃったんだね。でもだいじょうぶ、〇ちゃんは他の事ができるよ』とか『明日少しでもできればいいんだよ、明日ができなくても明後日がある、毎日少しでもゆっくり進んで行こうね、それでいいんだよ』と言って安心させてあげましょう。

子どものしつけ お片づけ

 

幼児後期 5~7歳頃

この頃獲得するものは「自分で考えて自分で行動する」という自主性です。自主性を発達させるには、よほどのことがない限り子どもの自由に行動させてあげることです。自由と言っても「わがままにする、放置する」こととは全くちがいます。誤解のないように。この年齢までに「約束は守ることなんだね」「守ると気分がいいね」など身についていることが重要です。その上での自由です。もちろん危険なことはNGです、親は「目は離さず口は出さず」です。

子どもが自分で考えているときはゆっくり待ってあげましょう。親はせかさない、焦らせない、脅かさない。これです。『どうしたいの?どうすればいいと思う?』聞いてあげたら親は待つ。じっくり待ってあげます。子どもの個体差がありますから時間がかかる場合もあります。それでも予め時間をじゅうぶんとって考えることを奨励します。親もこころのゆとりを持っていることがだいじです。

そして自分で考えたことを行動に移したときも見守りましょう。遊んでいるときも勉強しているときもです。つい親は『なんでそんなことしているの、もっとこうしたら早いのに』とか『なにやってんの!それはこうするものよ!』なんて言ってしまうと子どもの自主性は伸びません。考えることをあきらめてしまいます。危険ですね。考えないと行動もできないし他者に依存的になります。人に決めてもらって失敗したら人のせいにする、そんな性格が身についてしまうかもしれません。自主性がなかなか身につかないと罪悪感へと発展していきます。

 

学童期 8~12歳頃

この時期の獲得するものは勤勉性と対人能力です。人格形成の土台固めですね。社会性の基盤づくりです。親より友だちがよくなります。友だちと遊ぶことは子どもの協調性や道徳性などを発達させます。社会性を発達させる大切なことです。自分も相手も大切にする考え方が身につくといいですね。

ここもとてもだいじな時期です。ものごころついて、自分なりに考えるようになりますから、ここでのポイントは子どもの気持ちや考えをよく聴くことです。聴くとは深めていくこと。『あ、そうなんだね、そう考えたのはどんな気持ちから考えたの?』と、問いかけをしてみましょう。決して問い詰めではなく問いかけですよ。この問いかけがだいじ。問いかけられると人は考えようとします。これが自分に向き合うキッカケとなるのです。早くから客観性を身につけると自分を俯瞰してみる習慣がついて他者との関係づくりでも自己中心性を抑制できます。危険なことは思い込みです。自分の考えだけで「きっとこうだ!」「これはこういうことだ」と決めつけてしまうことは避けたいです。人との関りが少ないと陥ることがあります。防ぐには人とのかかわりを増やし『ぼくはこう思ったんだけど』と意識が自分に向いたあと、お母さんはどう思ったの?お父さんはどう思ったの?友だちはどう思ったか?学校の先生は?と他者の考えを聴き取ることで冷静で総合的な判断が身についてきます。ここがだいじです。

対人能力は社会性を発達させることにつながります。この時期は本来ギャング・エイジ、同年齢の仲間同士のグループ、ギャング集団をつくります。自分たちでつくった小さな社会で集団内のルールを決めたり活動を計画して実行(遊び)したり、それぞれに役割があったりしてそれを果たすと仲間に認められ自信を持つことができます。近年では生活空間の変化、遊びの変化(ゲーム機)により集団は見られなくなり、社会性の発達によくない影響を及ぼしているのではないかと言われています。

この時期の危機は、いじめ、不登校、ひきこもり。社会性を発達させる時期に対人能力が育たないなど課題があると孤独・孤立といった状況をつくってしまうこともあります。親は学校での生活に関心をもって見守りましょう。気配を感じたらすぐに学校と連絡を密にして専門家に介入してもらうことも視野に入れていきましょう。ひとりで抱え込まないで!

24時間こどもSOSダイヤル 0120-0-78310

 

青年期 13~22歳頃

前半は学童期の延長ですから学童期の注意点をしっかり意識していきましょう。中学生になると心身の変化も顕著になります。対人関係の悩みも出てきます。自分でも変化に戸惑いどう対処していいかわからない、親にも言えないことがあります。他者に相談するにも恥ずかしい、どう思われるか、など抵抗が生まれますが、このとき頼れる友だちがいる先生がいる、親以外の信頼できる大人がそばにいることが望ましいです。カウンセラーなどをホームドクターのようにつくっておくのも良いですね。

この時期獲得するものは、アイデンティティの確立です。自分は何者か?やりたいこと、なりたいものは何か?やりたくないことは何か?など自分に向き合い、自分を知る理解する時期です。

自分を知るには自分を俯瞰してみる客観性が必要です。部活、友だちやグループで交流することで他者を意識するようになります。ときには友だちと比較して優越感または劣等感を抱いたり、嫉妬したり、憧れが羨望になり、理想と現実の狭間で揺れ動く心境など、進路はもとより友人関係、恋愛関係、さまざまなこころの葛藤が訪れます。これら一つひとつを乗り越えて自分の存在価値を確信でき、アイデンティティが確立できます。

この頃から自分で決めたことは自分が引き受けた(自己責任)ことという考え方が身についているといいですね。また「やること」やる必要があることは我慢ではなくて納得してやるという気持ちがだいじです。

 

成人前期 23~34歳頃

現代ではこの頃まで青年期という定義もあります。なかなか自分というものがわからない掴めない、進路の選択ができない、進む方向性が見えてこない、何に向いているのかわからず職を転々とする、などの状態をアイデンティティの拡散と言います。迷うことはいけないことではありません。迷いを放置したり迷いから逃げようとすることが自分によくないことです。迷ったらひとりで悩まずカウンセラーなどにサポートをお願いすることです。

この頃に獲得するものは親密性です。人間関係の中で人との信頼関係を築き、交際、恋愛、結婚への希望が高まる時期です。アイデンティティが確立されていて自分で選んだ職業に就き経済的にも安定してくると自分の家庭や家族を持ちたくなります。近年では男女とも40歳前後まで独身を謳歌する傾向もありますが生理学的(哺乳類)には妊娠適齢期が20代であることから本来であれば20代の結婚が望ましいのかもしれませんね。親密性を獲得できないと「孤独・孤立」に陥る可能性が高くなります。孤独や孤立を感じるようなら放置せず早めに専門家を頼ってください。

 

成人後期 35~60歳頃

この時期獲得するものは世代性です。親として子育て真っ只中から育て上げ社会へ送り出す時期です。世代性とは、次の世代を支え育み次世代の人生にも責任を持ち、これまでの経験や知恵など良いものを次世代に託していくというように次世代への関心とケア(お世話)と人格的活力を獲得します。これによって人類の命を次世代へつなげる役目を果たすわけです。逆に獲得できないと停滞性といって、自分さえ良ければいいというように身勝手で頑固で古い考えに留まる傾向があります。

こうして人間は生涯を通して発達していきます。

 

老年期 61歳以上

現代では平均寿命も延び男性79.55歳女性86.30歳。しかし健康寿命は男性70.42歳女性73.62歳となります。健康を損なって不自由さを感じながら10年~13年くらい生きる計算になります。あくまで統計上なので個人差はあります。60代はまだまだ活躍できますね。定年も延長することができたり、退職後も社会と関わりを持って生きることは健康維持にとてもだいじです。

65歳から前期高齢者75歳からは後期高齢者と呼ばれます。よく80歳の壁という言葉を聞きますが、70代とは体力も気力も異なるようです。この80歳の壁を乗り越えるためには70代の10年間の過ごし方が大きく影響するそうです。どのように過ごせばいいか?それは新しいことに興味・関心を持ち、やってみる、行動してみる。人とのかかわりもだいじです。ラクだからといって同じ人とばかりつき合うのではなく、新しい友達をつくる、知り合う、話す、聴く、共感する、などの行為がこの先の人生の生き方を左右するようです。絶望的にならないようにいくつになっても生きる目的や希望を持ちましょう。

平均寿命と健康寿命

90歳でも元気にSNSで自分を発信表現する人、農作業に勤しむ人もいれば寝たきりになってしまう人もいます。もちろんその人の遺伝子的なものも関係していますが、なんと言っても思考の仕方でしょうね。前向きでポジティブでアクシデントにも臨機応変に対応できて、たとえ落ち込むことがあっても切り替えが早く、いつも当たり前のことに感謝している人が気持ちよく天命を全うできるのだと思います。見習いましょう。

いかがでしたか?人間の一生を発達心理学の視点で眺めてみるのもいいものです。よい人生にしましょう。

 

※参考:やさしくわかる発達心理学/林洋一著

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